8つのキャラクター・ピースを組曲風にまとめた作品。1911年~1912年頃の作品とされる。そのロマン派的な発想や、ピアノ書法は、シューマンから影響をうけたものである。そこにあるのは子供たちの謝肉祭と道化的な仮装の世界であり、「技術的な意味においても、音楽的な意味においても、自らの語法を単純化した」とセヴラックは述べている。わかりやすく、親しみやすい曲調が魅力的な「中級適度のロマンティックな小品集」。セヴラックは1921年に同名の作品《休暇の日々から》第二集の作曲にもとりかかったが、未完のままこの世を去ることになった。
1.シューマンへの祈り/Invocation à Schumann:8分の6拍子で緩やかに揺れる曲調は、シューマンの《子どもの情景》の第一曲を想わせる。旋律は、はっきりと浮き立たせ、しかし表情豊かに。上行、下降の動きにあわせた自然な表現をするとよいだろう。左手の和声的な変化も感じること。
2.I お祖母様が撫でてくれる/No 1, Les caresses de Grand’Maman:4分の2拍子二長調。「ゆるやかに、とても表情豊かに」歌われる美しい旋律は、とても優しく、懐かしさを感じさせる。それぞれのフレーズの終りの音が、何度も繰り返しうち鳴らされされていることに注意したい。場面によってそれらの音は、安心感や緊張感を高める効果をもたらしている。
3.II 小さなお隣さんたちが訪ねてくる/No 2, Les petites voisines en visite:4分の2拍子、ハ長調、「ロンドのテンポで陽気に速く」奏される。弱拍からはじまる部分と、強拍からはじまるフレーズに交互にあらわれ、それらが曲に推進力と面白みを与えている。子供の無邪気な愛らしさを感じさせる一曲。
4.III 教会のスイス人に扮装したトト/No 3, Toto déguisé en Suisse d’Eglise:4分の4拍子。「表情豊かにゆるやかに、そして華麗に」。教会のスイス人に扮装して、かしこまってふるまってみせる男の子、そんな男の子を見守る大人たちの温かい眼差しも同時に描かれているのではないだろうか?4分音符で動く和音の合間につけられている細かい音の動きに、子供らしい愛らしさがある。
5.IV ミミは侯爵夫人の扮装をする/No 4, Mimi se d éguise en “Marquise”:4分の3拍子、ニ短調。二長調の中間部をもつ。「メヌエットのテンポで」。」侯爵夫人の扮装をして優雅にふるまってみせる少女が描かれている。軽やかなタッチで奏する3拍子、スフォルツァンドを効果的につかうことで、リズムがひきしまるだろう。
6.V 公園でのロンド/No 5, Ronde dans le Parc:4分の2拍子、イ長調、アンダンティーノ。
上品な雰囲気をもった舞曲。特にフレーズの終わりの処理が雑にならないように注意し、次の音へのつながりを感じて演奏するとよい。
7.VI 古いオルゴールが聞こえるとき/No 6, Où l’on entend une vieille voîte à musique:8分の12拍子、変ロ長調。3連音符が絶え間なく連なっており、キラキラとした旋律の下でそれらが織り成す響きの変化が美しい。3つの音はそれぞれ均等の間隔で奏する必要があるが、それが決して機械的なものになってはいけない。手首のしなやかな回転を利用しながらバランスよく音の間隔をつくっていくようにしたい。
8.VII ロマンティックなワルツ/No 7, Valse Romantique:4分の3拍子、変ホ長調。「生き生きと速く」。優雅さと、洗練された華やかさを兼ね備えた魅力的なワルツ。第7曲とともに、アンコール・ピースとして奏されることも多かったようだ。3拍子を感じることももちろん大切だが、この曲では、一小節を大きな一拍でとらえる感覚も重要であろう。3つの声部それぞれが違った役割をもっているので、それぞれをうまく弾きわけ、曲に推進力をもたせられるとよいだろう。