ラヴィーナ : スケルツォ―古風な様式による イ短調 Op.85
Ravina, Jean-Henri : Scherzetto dans le style ancien a-moll Op.85
作品概要
初出版社:Leduc
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:スケルツォ
総演奏時間:1分50秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
総説 : 上田 泰史
(750 文字)
更新日:2018年3月12日
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総説 : 上田 泰史 (750 文字)
初版 : Paris, Alphonse Leduc, 1880 献呈 : A mon élève Mlle Amélie de NIOAC
ラヴィーナが62歳のころに出版した作品。19世紀の後半は、ピアノ学習の流行が熱を帯び、サロン用の音楽以外にもベートーヴェンやモーツァルト、メンデルスゾーンなど19世紀前半以前のドイツ・オーストリアの作曲家の作品がフランスで盛んに出版された。ラヴィーナ自身も古典音楽への造詣が深く、ベートーヴェンの交響曲全曲を4手用に編曲しており、初級・中級者向けのベートーヴェン、ハイドン、フンメルの作品も校訂している。古典音楽が普及する中で、ラヴィーナのような同時代のピアニスト兼作曲家も「古風な様式で」作品を書いてみようと思うようになった。つまり、「古風な様式で」という表現は、ここではベートーヴェン以前の古典的なスタイルを模して書いた、ほどの意味で捉えて良いだろう。
曲の形式は序奏(第1~4小節)-A(第4~31小節)-B(第31~47小節)-A1(第47~74小節)-B1(第74~90小節)-A2(第90~102小節)と表すことができる。Aが3音から成る息を切らしたようなモチーフから成るのに対して、「優しく機嫌を伺う(lusingando)」ようなB(pで静かに始める)では、アルベルティ・バスに乗って優美な旋律が奏でられる。この2つの性格の違いを、テンポを過度に揺らすことなくレガート、スタッカート、強弱の変化によって表現することがこの作品を演奏する際のポイント。
※この解説は2015年に出版されたアンリ・ラヴィーナ『ラヴィーナ・ピアノ曲集』(カワイ出版, 上田泰史校訂)の解説に基づいています。