作品概要
出版年 1910年
初出版社 Jobert
楽器構成 1台4手
総演奏時間 4分30秒(各曲40~60秒)
18歳の年に書かれ同年に出版。タイユフェールの記念すべき初出版の作品となった。ケル
ヴェゲン家の二人の令嬢(Marie et Thèrèse de Kerveguen)への献呈。子ども向きの平易
な書法の中にも、メロディ、和声、対位法処理に抜群のセンスが光り、大器の片鱗を見せ
る。18歳で《3つの無窮動》を書いたプーランク、15歳で歌曲を出版したオーリックに並
び、タイユフェールもまた早熟の才気に恵まれた若者であった。当時在学していたパリ音
楽院では優秀な成績を収めながらも、確執のあった実父の目をはばかり、母と姉の協力を
得て隠れるように通学していたことを後年述懐している。
本作品の出版譜には作曲者として “G. Tailleferre” と表記された。私見では、1910年時点の
この表記は、実名タイユフェス(Taillefesse)をぼかし、19世紀までの女性作曲家の多く
がそうしたように女性であることを明らかにしないためのペンネームにすぎなかったので
はないかと推測する。出版譜に “Germaine Tailleferre” がフルネームで登場するのは、実父
との死別を経て第一次大戦後に発表された《野外遊戯》(2台ピアノ、1919年)まで待た
ねばならない。アイデンティティがペンネームに一致したという点で、《野外遊戯》を真
の出世作ととらえることもできよう。
《4手のためのやさしい小品》(Pièces faciles à 4 mains)との副題があり、導入から基礎
段階の学習者同士で無理なくとりくめる。両パートの連携もこまやかに配慮され、アンサ
ンブル入門として学習上大きなメリットが期待できる。曲想の変化と全体のまとまりもよ
いため、日常のレッスンから本格的なコンサートまで用途の幅は広い。《初めてのおてが
ら》のほかに《最初の偉業》《最初のお手柄》など複数の邦題がみられる。
第1曲 Pas trop vite(速すぎずに)、4分の4拍子、ハ長調。
第2曲 モデラート、4分の4拍子、ト長調。
第3曲 アレグレット、4分の3拍子、イ短調。
第4曲 アレグロ・ノン・トロッポ、4分の2拍子、ヘ長調。
第5曲 A poco lento(少し遅く)、4分の3拍子、ニ短調。半終止で第6曲に続く。
第6曲 Con moto(動きをもって)、8分の6拍子、ト長調。