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平井 康三郎 :幻想曲「さくらさくら」

Hirai, Kozaburo :Fantasy "SAKURA SAKURA"

作品概要

楽曲ID:17449
初出版社:Zen-On Music Co., Ltd
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:幻想曲
総演奏時間:3分20秒
著作権:保護期間中
原曲・関連曲: 日本民謡さくらさくら[古謡]

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展5 展開1 展開2

楽譜情報:4件

解説 (1)

総説 : 仲辻 真帆 (1207文字)

更新日:2018年3月12日
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8小節の序奏が、鮮烈に「幻想曲」を歌いはじめる。演奏時間にして約30秒。その間に、強弱はpからsfffまで変化をみせ、3連符は16分音符へ受け継がれてゆく。  序奏に続き、のびやかな《さくら》の旋律がつむがれる。ここでは、4分音符と8分音符が主体であり、装飾も控えめ。この後、“Più mosso”(23小節目)、“Largamente”(29小節目)と速度も表情も変えながら曲は進み、“Allargando”“molto accel.”“Rapidamente”“rall.”と矢継ぎ早に指示があったかと思うと、“Tempo I”(35小節目)で曲調が一転する。第35小節からは太鼓を模した軽快なリズムが刻まれる。そして、第47小節から《さくら》の旋律が高音部で打ち鳴らされ、やがて低音部も主題を奏した後、再度高音部に移った旋律は勢いを増して頂点へと達する(60小節目)。そこから一気呵成に駆け抜けて終曲。最後のE音が静かに余韻を響かせる。  原曲は、近世箏曲の《さくら》である。各教科書にも採録されてきた《さくら》は、これまでいくつもの歌詞が付けられてきた。「さくら さくら 弥生の空は 見渡すかぎり 霞か雲か 匂いぞ出ずる いざや いざや 見にゆかん」の歌詞は、明治21(1888)年に出版された『箏曲集』(編集者:文部省・音楽取調掛、発行者:東京音楽学校)に掲載されたものである。筝曲の近代化の歩みを示唆した『箏曲集』は、伊沢修二、里見義、加部厳夫によって歌詞が作られたとされる。  この《さくら》を基に、平井康三郎(保喜から改名)は変奏曲風の《幻想曲「さくらさくら」》を仕上げた。平井は日本の民謡やわらべうたの編曲・解説も行っており、自身の作曲作品にも「日本的な」要素をとり入れた。《日本の笛》や《日本詩曲》、あるいは《平城山(ならやま)》などもその一例と見做せるかもしれない。平井は次のように述べている。「私は少年時代を田舎で暮したので、土臭い民謡の節廻しがいつとはなしに耳に親しんでいた。それが私に『日本の笛』のような民謡作品を作らせ、又日本民謡の合唱編曲や民俗的な室内楽曲を作らせる遠い因になつていることを認めないわけにはいかない。私は今後も自分の血の中に自然にとけ込んだ日本民謡の味が、創作の中ににじみ出てくるような仕事をして行きたいと思う。」  《幻想曲「さくらさくら」》は、親しみやすい旋律がちりばめられているだけでなく、ファンタジーとして原曲にいっそうの奥行きを加味した作品と言える。変化に富んだ、はでやかな一曲である。 ■参考資料 ・富樫康『日本の作曲家』 東京:音楽之友社、1956年、256・257頁。 ・全音ピアノピース297 『幻想曲さくらさくら』 東京:全音楽譜出版社、1971年。 ・金田一春彦・安西愛子編『日本の唱歌(上) 明治篇』 東京:講談社、1977年、76・77頁。

執筆者: 仲辻 真帆

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瀬田 敦子