1898年、13歳頃の作品。《無言歌》Op. 5、《蝶々》Op. 6、《メヌエット 》Op. 7、《即興曲》Op. 9(a)、《無言歌》Op. 10とともに、《6つのピアノ小品集(Sechs Klavierstücke)》として、1902年ブダペストの出版社ハルモニア(Harmonia)から出版された。これら初期の作品には、メンデルスゾーンの無言歌集や、グリーグの叙情小曲集、チャイコフスキー、シューマンの小品などのロマン派の作曲家達の影響が顕著に感じられる。いずれの作品も、とてもシンプルでナイーブな作風の中に、ドラの透き通るような若く瑞々しい感性が光っている。
この作品が誰に献呈されたかは不明であるが、「ナシツェでの楽しい日々の思い出に、1903年7月25日ナシツェにて、ドラより」と彼女の手により記入された印刷譜が残っている。左手の3拍子の波に揺れるような伴奏に乗せて、物憂げなゴンドラ漕ぎの唄が歌われる。