デュティユー :田園詩
Dutilleux, Henri:Bergerie
総説 : 平野 貴俊 (434文字)
デュティユー(1916‐2013)が初期に作曲した教育用小品。第2次世界大戦直後の1946年、すなわちデュティユーが代表作《ピアノ・ソナタ》(1947)で初めて大きな成功を収めるちょうど1年前、デュティユーはアンリ・ルモワーヌ社から依頼を受け、同時代の作曲家によるピアノ曲を収めた教則本『子どもの庭(Jardin d’Enfants)』の一曲としてこの作品を作曲した。タイトルの「田園詩(Bergerie)」は、中世フランスの宮廷詩人による歌の一ジャンルで、羊飼いたちが交わす楽しげなやり取りを題材とする一種の牧歌である。曲はABA形式で、ニ長調のAは3つのセクションに分かれる。Aとは対照的にレガートが目立つBは、最初ト長調で始まるが、まもなく3拍子と2拍子の交替が現れ、フラットが増えてミクソリディア旋法となる。最後は同じくミクソリディア旋法でAの主題が回帰し、ニ長調に戻って終わる。なお初版では、左手の最初の音(第5小節2拍目)に2、5という運指が施されている。
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