ダマーズが最初に作曲した練習曲集。彼はその後2つのピアノ用練習曲、2つのハープ用練習曲のほか、フルートやトランペットなど管楽器のために12の練習曲集を書いている。自身ピアニストとしても長年活動したダマーズが、ピアノ以外の楽器のためにこれほど多くの練習曲集を作曲したのは驚くべきである。《8つの練習曲》は、定型的パッセージの習練を目的とするものの、巧みな調性とリズムの変転、軽やかで爽やかな抒情にあふれている点で、他のダマーズの作品と変わりはない。
第1曲目 アレグロ 2度、3度、4度を含む、十六分音符4音からなる音型が反復される。中間部では、右手が装飾音の付いた旋律を高らかに歌い上げる。
第2曲 アレグレット 旋律を形成する刺繍的音型が間断なく現れる。レガートとスタッカートの対比、16分の8と16分の5の交替に特色がある。
第3曲目 ヴィヴァーチェ 初め和音、のちにさまざまな音型が、両手間でパッチワークのように交差する。線的なテクスチュアと和声を主体とする部分の交替を的確に弾き分けなければならない。
第4曲目 スケルツァンド 同音連打とオクターヴの跳躍が組み合わされた5連符の練習。ほかに、同音連打のみによる左手の5連符、両手でトリルを弾きながら旋律を浮かび上がらせるなどの技巧が要求される。
第5曲 アレグロ・デチーゾ 3和音の急速な連打を主とする。途中左手は、順次進行を外声で弾きながらスタッカートで和声の同音連打を行う。
第6曲 アンダンティーノ 淡い憂愁を帯びた旋律が、3度と4度を含む32分音符の急速な音型で彩られる。ダマーズの好むグリッサンド的音型である。
第7曲 アレグロ・ヴィーヴォ 3度、4度、6度の数音からなる音型を両手で交互に奏する。半音階的な短い音型、右手でのオクターヴの連続なども差し挟まれる。
第8曲 プレスト 半音階的な上行、下行音型がグリッサンドのように両手を駆けめぐる。途中4分の3拍子になり、2度の音型の連続を背景として、ややゆったりと旋律が奏される。