この曲において、音の選定やリズム、また音響処理のためのパラメーターは、3D画像の手法にあるparticles画像の動きが基になっている。ピアノ演奏部分に関しては、 particlesの動きをMIDIノートナンバー(音程)、ベロシティ(強弱)、デュレーショ ン(持続)に変換したものを楽譜化してあり、一つは奏者によって、もう一つはMIDI ピアノによる自動演奏を行う。また、音響処理としては、リアルタイムに奏したピア ノ音を、particlesの動きの変換数値によって、フィルター、ディレイ、ピッチチェン ジ、ループの音響を作り出しており、それらは、ピアノ内部に仕込まれたコンタクト・スピーカーと2chのPAスピーカーによって再生される。構成は7部。
この曲は、コンピューター音楽のほとんどの共通テーマの一つでもある科学的数値を音にすることの行為、そしてそれを享受することとは何なのかが、コンセプトにな っている。今回、particlesである理由としては、常識であって説明できない、生活の一部なるものを感じさせられるもの、その一つとして、重力というものが、音と音と の関係性を想像できるのではないかという点である。粒子の動きの中の重力が、音塊から成長していく音階への動きと関係していく様を、またその関係は極めて小さなも の(弾指レベル)に還元されていくかもしれない様を、生み出された楽譜というもの によって、まじめに演奏させられる行為と再生される音響から、何か感じられるもの があるのではないかと思っている。ピアノ音楽の伝統文化の一つで ある連弾を人間と非人間の2手+αで行う試みの3作目にあたる。