作品概要
解説 (2)
解説 : 今関 汐里
(355 文字)
更新日:2019年8月7日
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解説 : 今関 汐里 (355 文字)
1830~32年作曲。
ワルシャワのショパン博物館に自筆譜が所蔵されている(請求番号M/196)。
ヘ短調、8分の6拍子、Allegro molto agitato
ショパンの練習曲集Op.10の中では、圧倒的に右手の演奏技術を高めるための作品が多い中で、本作品は、左手のための数少ない作品の一つである。左手の16分音符の分散和音による伴奏音型が課題となっている。左手の分散和音は、オクターヴ以上離れた小指の音と親指の音が含まれているため、2、3、4、の指を軸とし、横移動のための手首と肘の柔軟性が求められる。右手の旋律は、1拍目裏拍から、八分休符を挟み途切れ途切れに順次進行し、3小節間続く跳躍進行のぎこちない姿で現れる。
中間部(17小節~)は、借用和音の連続により、調が不安定になり、緊張感と激情が高まっていく。
演奏のヒント : 大井 和郎
(1313 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1313 文字)
第9番 ヘ短調 まずこのエチュードは、molto agitato と書かれてあることをしっかりと覚えておきます。拍の頭(表拍)が休符になっているとき、音楽は時にとてもagitatoになります。本来音があるべき場所に音が無いと、とても精神的に落ち着かない様子になります。1小節目、今、拍の頭には1拍目も2拍目も8分休符が書かれていますが、このメロディーラインである、F-G As-Bを、拍の頭まで左にずらして、8分休符を各拍の最後に持ってきてみましょう。左手の音とクラッシュするものの、それを工夫さえすれば一応曲にはなりますが、そこまで不安定な感じには聞こえないと思います。ところがショパンはあえて、拍の頭を休符にしています。とても落ち着かない様子の表現になります。 果たして、この曲全体は非常にagitatoで演奏されなければならない事を理解して下さい。 ◎ 1小節目、2つの8分音符の連符でスラーがかかっているものは、1つめの音符にストレスが入り、2つめの音符は抜くようにします。2つめの音符にアクセントが付かないように。 ◎ 1小節目、1拍目よりも2拍目、それよりも2小節目1拍目の方が大きくなるように、前述した2つの音符の秩序を守りながらクレシェンドをかけ、テンションを上げていきます。 ◎ 1つのフレーズが1小節目から始まり4小節目で終わると仮定したとき、このフレーズの中で一番高い音は2小節目のAsですが、そこは大きくせず、4小節目の最後のメロディーラインである、Cに向かうようにします。つまりはCが一番大きくなります。2つめのフレーズである、5小節目から8小節目まででは、8小節目の1拍目のAsが最も大きくなります。以降、同じフレーズは同じダイレクション(方向性)になります。 ◎ 2小節目2拍目のCからAsに飛ぶとき、普通に聴いていては分からないくらいの微量の時間を取ります。同様に、6小節目の2拍目、Cからオクターブ上のCに飛ぶときも同じです。 ◎ 奏者が気をつけなければならないのは25小節目のように、メロディーラインがオクターブになったときです。硬く聞こえてしまいがちです。単旋律の半分の力で十分です。また、2つとして同じ音量のオクターブを作らないようにします。 ◎ 29小節目、Desが4つ、メロディーにあります。4つめのDesに向かっていきます。この場合も、Des4つが同じ音量にならないようにします。同じ音だと特に目立ちます。以下同様。 ◎ 硬く聞こえてしまう最たる例が35小節目の右手です。フォルテと書いてあっても始めからフォルテでは無く、最後のCに向かうようにします。ここも決して音量を上げすぎず、また、2つとして同じ音量のオクターブを作らないようにします。 ◎ 53小節目から始まり、56小節目のDesまで達する長いフレーズは特に音量に注意します。始めから音量を上げてしまうと行き所が無くなります。 ◎ 1小節目、奏者が苦労するのは2拍目の左手、CからDesに飛ぶところです。Desまでは遠いので、しっかりとDesが鳴っていることを確認して下さい。以降、全ての広いリーチに気をつけます。
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