シマノフスキのピアノ曲には、文学と関わりがあると考えられる作品が多くあります。
道化師タントリスが入っている仮面劇 Masques』もそのうちの一つです。
『仮面劇 Masques』はシェヘラザード Shéhérazade、道化師タントリス Tantris le Bouffon、ドン・ジュアンのセレナーデ Sérénade de Don Juanの 3 曲からなり、その中でも道化師タントリスは、ドイツの作家エルンスト・ハルトErnst Hardt(1876-1894)の同名の戯曲がタイトルの由来であるという見解もあります。
悲劇の結末を暗示するかのような響き、物語の登場人物の不安な心情を表わすような不協和音の連続など、シマノフスキの音楽が魅せる一つ一つの表情を文学と結びつけて表現することも出来ます。
シマノフスキがこの曲に取りかかる前年に会ったとされる、ドビュッシー、ラヴェルの音楽へのオマージュという点でもとても興味深い作品です。
原色的な色彩を感じ、物語を演じるように官能的な演奏が出来ると良いですね。