シューマン : 色とりどりの小品 3つの小品 第1曲 Op.99-1
Schumann, Robert : Bunte Blatter Drei Stucklein: I. Nicht schnell, mit Innigkeit Op.99-1
作品概要
解説 (1)
演奏のヒント : 大井 和郎
(800 文字)
更新日:2025年7月21日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (800 文字)
まさに歌と伴奏の曲で、歌曲と考えて間違いありません。冒頭の歌の部分の、Fisの音は、Unprepared non harmonic tone と言い、アプローチ(準備音)が存在せずに、いきなり始まる種類の非和声音です。この、歌の部分では、例えば、2小節目3拍目から始まる同じパターンでも、この場合は非和声音ではありませんが、この、前の拍から始まる音は、クレシェンドとディミニュエンドが小さく書かれていて、つまりはその音を強調する=その音を大切にして時間を取る という意味です。
この曲の場合、本来は自由に歌いたいところなのですが、それを邪魔してしまうのは、切れ目の無い16分音符の存在です。この16分音符が鳴り続けているが故に、音楽を揺らしてはいけない という呪縛にかられますが、実際は歌を最優先しなければなりません。
試しに、単旋律で歌の部分を弾いて見て、十分ルバートをかけて弾いてみて下さい。16分音符が無いと、どれほど自由に歌えるか判るはずです。
そして、今度は、今弾いた自由な歌い方をそのままにして、16分音符をつけてみましょう。16分音符が歌をフォローして自由に時間を取ったり、速度を速めたりするほうがよく、メトロノームのように弾く事は好ましくありません。
12小節目3拍目裏拍から始まる歌の部分の、Gis は、これまでで最も高い位置から始まるテーマなので、より一層、時間を取り、このGisを特別なものとして強調するようにします。6〜7小節間は2拍単位のシークエンスのようなものですので、今度は逆に、音楽を前へ前へ押していく感じにしてみてください。このように、場所によって、自由に歌いあげ、テンポも自由に調節してください。
楽譜
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