ベートーヴェン :11のバガテル 第6番 Op.119-6 ト長調
Beethoven, Ludwig van:11 Bagatellen Nr.6 G-Dur Op.119-6
解説 : 鐵 百合奈 (502文字)
Andante 歩く速さで - Allegretto やや快速に
1820年~21年頃に書かれ、第5番までの初期の作風とはがらりと変わって後期の作風となる。序奏(Andante部分、4分の3拍子)は幻想に満ち、カデンツァ風である(ピアノ・ソナタ第28番以降の後期ソナタの緩徐楽章の雰囲気に似ている)。
第7小節目から始まる主部(Allegretto部分、4分の2拍子)は“leggiermente (leichtlich vorgetragen)”「軽やかに(軽々と演奏して)」と指示され、淡い想いやとりとめのない思考がするすると流れていくよう。
繰り返される同一のリズムと、ひたすらに続くタイによって小節線や拍感の感覚が希薄になっていく。構成感や主張は影を潜め、自己と対話するような思索が流れ続ける様式は、後のロマン派のシューマンなどの作風に通ずるものがある。第40小節目で8分の6拍子に変わるが、“l’istesso tempo (dieselbe Bewegung)”「1拍の長さを変えずに同じ速さで(同じ動きで)」と指示されており、拍子の変化を気付かせないようにグラデーションのごとく弾くと良いだろう。
[CBJ 2020]ベートーヴェン:11のバガテル 作品119-6
検索