ベートーヴェン :11のバガテル 第7番 Op.119-7 ハ長調
Beethoven, Ludwig van:11 Bagatellen Nr.7 C-Dur Op.119-7
解説 : 鐵 百合奈 (427文字)
Allegro, ma non troppo 快速に、しかしはなはだしくなく
演奏時間1分程度の、即興的な曲。何かのソナタの一部の楽想として書き付けたが不採用にしたものなのでは、と筆者は想像している。もしくは、この曲のトリルの発想が成熟し、ピアノ・ソナタ第32番のラストの感動的なトリルにつながったのかもしれない。
空気を震わせるトリルをともなう旋律の断片が木霊(こだま)するように4度繰り返され、第5小節目の終止形も、第6小節目でバスが木霊している。第7小節目からは“scherzando”「諧謔的に」とあり、気まぐれな楽想がカノン風に追いかけあい、いたずらっぽくおどける。第15小節目から再び幻想的な冒頭のトリルと木霊がpから徐々にcresc.し、音量の増幅にしたがって右手の音価が細分化されつつ昇っていき、ついに夢から覚醒したかのようなffの分散和音で駆け下りたところで曲が終わる。前奏曲の性格を有していると捉えることもできるだろう。短いけれども深い。
[CBJ 2020]ベートーヴェン:11のバガテル 作品119-7
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