Presto 極めて速く - Andante amabile e con moto 歩く速さで愛らしく、そして動きをもって - Tempo Ⅰ 冒頭のテンポで
冒頭のプレストは4+2の6小節で疾風のように過ぎ去り、続く主部は3小節を基本単位としている。空虚5度の左手の上で右手が控えめに言いよどむ前楽節6小節(第7~12小節目)と、豊かな弦楽四重奏のような後楽節6小節に続いて、ゆったりとした舞曲風の左手の上を右手の三連符がひらひらと漂う3小節の短いコデッタが付加される。第22小節目からコデッタの三連符のモティーフが展開された後、空虚5度が三連符になり謎めいた雰囲気になって前楽節が再現され、後楽節は広音域にわたって3度の重音が昇っていくという、原型をほぼ留めないほどの変容が施されている。コデッタだけが同じ音型のまま再現し、さらに展開していき、はらはらと天から舞い落ちてきて、鏡に映るように下行していく前楽節に沈み込む。着地したかと思いきや、冒頭の一陣の風が吹き抜け、すべては泡沫(うたかた)の夢だったと気づかされる。