リスト : 巡礼の年 第1年「スイス」 「ジュネーヴの鐘」 S.160/R.10-9 A159
Liszt, Franz : Années de pèlerinage première année "Suisse" "Les cloches de Genève" S.160/R.10-9
作品概要
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:6分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
演奏のヒント : 大井 和郎
(1146 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1146 文字)
9.「ジュネーヴの鐘」
ロマン派の音楽において所謂「歌の部分」を演奏する場合の奏法を知っておくことは大変重要です。この曲に限らず、歌の部分を演奏する際、歌手が目の前で歌っている事を思い浮かべてください。西洋人は骨が太く、声量もあり、悲しみの表現も強いです。その歌手が自分の目の前にいて、奥の方でピアノが伴奏していると想像してください。そしてそのバランスを演奏に生かしてください。コツとしては、メロディーラインは太く、カンタービレではっきりと聴かせ、伴奏部分は全く音質を異らせ、静かに柔らかく演奏することが重要なバランスです。
このタイプの、ppやdolceのマーキングが至る所にあると奏者は引きこもりがちですが、どんなにppでも、歌の部分ははっきりと聴こえなければなりません。まずこれが1つ重要課題です。
以下、箇条書きにて典型的な問題点を注意します。
◉5小節目より歌が入ります。ppでdolcissimoでも歌ははっきりと、そしてその分伴奏はほぼ聴き取れないくらいのpppにします。この曲は横に流れなければならないので、その意味でも伴奏部分のバランスがカギとなります。伴奏部の8分音符が大きいと、音楽が横に流れません。
◉21小節目2拍目より入るのはレゾネンスです。pppで。以下同様です。
◉多くの奏者の問題となるのが、29小節目以降の歌の部分です。ここから歌は左手にくるため、バランスを失いがちです。右手の伴奏の音が多くても、左手をはっきり聴かせます。
◉46小節目、cantabile con motoと書いてあるだけです。ここからテンポチェンジではありません。45小節目までのテンポと同じテンポで、少し動きをつける程度で始まります。48小節目は大きく見た場合、非和声音(サスペンション)であり、49小節目にて解決されます。ゆえに、この2小節間の2度のメロディーラインは必ず、2つ目の音が1つ目よりも弱くなります。以降、至る所にこの「2度」がメロディーラインに登場します。どんなにフォルテシモであろうとも、この秩序を守ります。
◉メロディーラインの基本的なシェーピングを説明します。46-53小節間を例にとります。46小節目のFisは、次のDisに衰退します。48小節目のDisは次のCisに衰退します。50小節目のEは次のDisに衰退し、53小節目のHは次のFisで最も弱くなります。このフレーズは、46-49小節間と、50-53小節間の4小節つずつに分けることができ、前半は後半よりも大きくなるようにします。以降、このシェーピングを使うようにします。
◉そしてたとえフォルテシモになろうとも(例:108小節目以降)、基本のシェーピングを守り、「固く、乱暴」にならないようにします。
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