“Dans un style de romance sentimentale anglaise”(イギリス風の感傷的な恋愛小説のスタ
イルで)という指示、そしてこの曲のタイトルが “A giddy girl”と英語で書かれていること
からも、この曲の雰囲気は単なる甘美なものではなく、どこか風刺的でユーモラスな要素
を含んでいることが考えられます。ここでのイベールの意図は、たしかに19世紀のイギリ
ス小説に見られるロマンティックな情感を音楽で表現することですが、フランス人の視点
から見た「イギリス的なロマンス」には、ちょっとしたスパイスが必要です。
“giddy”は「目がくらむ」「軽薄な」「浮ついた」という意味です。つまり、この作品の主
人公は恋に夢中になりやすく、すぐに気が変わるような若い女性でしょう。当時のイギリ
ス小説や劇に登場する「恋に浮かれる若い女性」、例えばジェーン・オースティンの人気
小説『高慢と偏見』に出てくるベネット家の末娘リディアは、そのイメージにぴったりか
もしれません。そうした気まぐれのキャラクターは、楽譜上によく表れています。音符に
付けられた記号や表示をよく読み取り、作品の背景に思いを巡らせることで、解釈は如何
様にも出来上がります。
演奏における留意点は、レガートを意識して、スラーによって示されたフレージングを大
切にすること。過度に情熱的にせず、品のある感傷性を持って。そして透明感のある響き
を目指しましょう。