作品概要
楽器編成:ピアノ合奏曲
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:2分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
解説 : 中西 充弥
(949 文字)
更新日:2019年1月6日
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解説 : 中西 充弥 (949 文字)
フロート車にピアノとそれを練習する奏者が乗り込んでいる様子である。楽譜には、作曲家ではなく出版社(ジャック・デュラン)の注記として「初心者の下手な演奏を真似するように」とあるが、作曲家もそれを想定していたであろう。作曲家紹介の概説でサン=サーンス自身もピアニストとして活躍したことを述べたが、よって、これは一種の自虐ネタでもある。華やかなステージの陰で、毎日地味な基礎練習に追われる哀れな演奏家の日常を活写しているのである。内容自体は非常に分かりやすいネタであるが、そもそも、この曲は《動物の謝肉祭》の制作動機と密接に関わっている。
もともと、この作品はサン=サーンスがニーデルメイエル宗教音楽学校でピアノ教師を務めていた頃(1861~1865年)この学校の生徒たちのために着想されており、この哀れな〈ピアニスト〉たちのモデルはニーデルメイエル校の生徒たちに他ならない。どれくらい哀れだったかと言えば、後に同校で勉強した作曲家、アンリ・ビュッセルの回想録からの引用を読んで頂けるとその情景がありありと目に浮かんでくる。「広い長方形の(練習)室に入ったとき、私はまったく驚いてしまった。壁に向かって十五台の竪型ピアノがずらりと並び、それぞれが同時に別の音楽を奏していたからである。それは、すさまじさのある轟音と言うべきものであって、私たちが室内に入ってもやまないのであった。けれども、校長の命令の身振りによって、十五人のピアノ奏者たちは、ぱっと手をとめた。その超多調的な交響には、バッハとベートーヴェンとモーツァルトがさわがしく同居していたが、それらがすこしずつ合間をおいて途絶えていった。」(アンリ・ビュッセル著、池内友次郎訳編『パリ楽壇70年』音楽之友社1966年)《動物の謝肉祭》中においてピアノが二台必要な理由は、室内アンサンブルに豊かな響きが欲しかったことはもちろんだが、この「超多調的な」雰囲気にインスピレーションを得た、〈ピアニスト〉のネタを実現するには複数台のピアノが必要だったことも大きな要因であると考えられる。またこの作曲の経緯を知った上で、もう一度〈らば(アジアノウマ)〉を見返すと、まだあどけない学生たちが共同練習室で一緒に速弾き競争をしていた図なのでは、とも想像される。
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