作品概要
出版年 1921年
初出版社 Sirène (のちMax Eschig)
楽器構成 ピアノソロ
総演奏時間 約5分半(各曲 1分半~2分)
第1集から間をおかずに書かれた第2集でも同傾向の作品が並ぶ。初演は、1920年11月21日、パリの六人組演奏会にてニニーニャ・ヴェロソ=グエラ(Nininha Velloso-Guerra, 1895-1921)によりおこなわれた。レオン・ヴェロソ(作曲家)の娘、オズワルド・グエラ(作曲家)の妻であったニニーニャは現代作品を得意としたピアニストで、ミヨーがブラジル滞在中に出会い家族ぐるみで交流を持った。《春》全6曲のうち3曲までが彼女に献呈されている。作編曲にもすぐれた才のあった彼女は、ミヨーの《男とその欲望》(Op. 48)、弦楽四重奏曲第4番(Op. 46)のピアノ4手用編曲を手がけ、卓越した初見能力を発揮してカンタータ《蕩児の帰郷》(Op. 42)の2台ピアノでの試演に協力するなど、ミヨーの創作活動に深く関与した。本作品の初演の翌年、26歳の彼女の早すぎる死は、ミヨーの青年時代の輝かしい日々に一点の暗い影を落とすこととなった。
「春」は、第1集、第2集ともに、ミヨーのピアノ独奏曲としては弾きやすく、応用段階の後期まで進んでいれば学習者でも無理なく演奏できる。演奏時間も手ごろでとりあげやすい。メカニックな技巧を前面に出す作品ではないかわりに、デリケートな音響と詩的な余韻を表出することで充分に魅力的なレパートリーとなり得よう。多調の処理、弱音とレガートの緻密なコントロール、ポリフォニーの的確な把握がポイントとなる。
第4曲 Doucement (甘く) 8分の6拍子。1919年3月21日、ベルンにて完成。Youra Guller (ピアニスト)への献呈。ユーラ・ギュラーについては、ミヨー《組曲》(Op. 8)の拙稿を参照されたい。
第5曲 Vivement (活発に) 8分の6拍子。1920年1月10日、パリにて完成。Nininha Velloso-Guerra (ピアニスト)への献呈。
第6曲 Calme (しずかに) 4分の2拍子。1920年3月28日、ニースにて完成。Céline Bugnion-Lagouarde(写真家・ピアニスト)への献呈。