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モーツァルト :ピアノ・ソナタ 第18(17)番 ニ長調 K.576

Mozart, Wolfgang Amadeus:Sonate für Klavier Nr.17 D-Dur K.576

作品概要

楽曲ID:302
作曲年:1789年 
出版年:1805年 
初出版社:Bureau d'arts et d'industrie
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:13分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
※特記事項:新モーツァルト全集では、ソナタ番号が旧来の「17番」から「18番」へと変更された。

解説 (1)

執筆者 : 岡田 安樹浩 (1839文字)

更新日:2009年12月1日
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モーツァルト自身による『自作目録』には、1789年7月の日付と共に「クラヴィーア用のソナタ」と記入されており、完成したクラヴィーア・ソナタとしては、最後の作品である。

以前は、北ドイツ旅行の際に謁見したフリードリヒ・ヴィルヘルム二世から委嘱され、王女フリーデリカのために作曲されたものと考えられていた。しかし、近年この説は疑問視されている。なお、初版は作曲者の死後、1805年にウィーンの美術工芸社より出版されたが、自筆譜は消失してしまった。

第1楽章 ニ長調 8分の6拍子 ソナタ形式

主要主題は、角笛を想起させる分散和音動機によって開始され、すぐに2度上で繰り返される。続いて主題の確保(第9小節~)が低音部で行われ、上声では16分音符によるパッセージがあらわれる。推移部は2つの部分からなり、まず16分音符のパッセージによる部分(第16小節~)、次に属調のイ長調で、主要主題の角笛動機が1拍遅れの模倣(完全8度のカノン)をともなってあらわれる確保的推移(第28小節~)となる。

属調に完全終止した後、カンタービレ風の副次主題があらわれる(第42小節~)。変奏をともなって確保された後、短いコーダとなり、最後にシグナル風の動機が鳴り響く(第57小節)。

後半部分(第59小節~)は、コーダの最後にあらわれたシグナル風の動機によって開始され、すぐに主要主題が変ロ長調であらわれる。1小節遅れの模倣(完全8度のカノン)をともない、ト短調へ転調すると、今度は半小節(3拍)遅れの模倣をともなって発展する。

16分音符のパッセージによってイ短調、ロ短調を経て、ふたたびシグナル動機があらわれる(第81小節~)。この動機はゼクエンツ風に繰り返され、ロ短調からホ短調、イ短調へと転じ、二短調を思わせながら、主調の二長調へと至る。

16分音符のパッセージから切れ間なく主要主題の再現へ接続される(第99小節~)。推移部が変形し、主要主題の確保において上声にあらわれた動機がレスポンソリウム風に発展する(第112小節~)。そして、すぐに副次主題が主調で再現されると(第122小節~)、前半部分で確保的推移の役割を演じていた主要主題の模倣的発展があらわれる。大規模なコーダと見紛うような構成であるが、前半部分と同様のコーダ(第155小節~)によって楽章を閉じる。

第2楽章 イ長調 4分の3拍子

楽章全体を通して、3声部を基本としている。当時、モーツァルトがバロック音楽へ深く傾倒していたことを鑑みれば、これはトリオ・ソナタ風といえるかもしれない。

旋回音型による装飾をもったイ長調の主題と、平行短調の嬰ヘ短調におけるイ音による装飾を特徴とした部分(第17小節~)からなり、32分音符のパッセージによる即興的な部分(第24小節~)をもつ。ふたたび嬰ヘ短調の主題があらわれ(第32小節~)、即興的な推移部を経て冒頭主題が回帰する(第44小節~)。最後に短調主題が主調のイ長調へ移旋された形であらわれる。

第3楽章 二長調 4分の2拍子 ロンド・ソナタ形式

ロンド主題は舞曲風の性格をもち、和音の刻みによる単純な伴奏をもって提示されるが、伴奏声部はすぐに16分3連音符の技巧的なパッセージへと変化する。この16分3連音符は分散和音へと変化し、楽曲の中心的な構成要素となる。

属調へ転じ、ロンド主題の動機がレスポンソリウム風に発展し(第26小節~)、16分3連音符による推移的なパッセージをはさんだ後に、順次下行を特徴とする和声的なクープレ主題が提示される(第51小節~)。そして、16分3連音符による分散和音の上下行による推移を経て、冒頭主題が回帰した後(第65小節~)、推移部が変形してヘ長調へと至る。

中間部は冒頭主題の動機が発展し、多声的に展開する。ヘ長調からト短調、イ短調、ロ短調、ホ短調を経てニ長調へと至り半終止する。

前半で属調主題を導入した、冒頭動機によるレスポンソリウム風の楽想が主調であらわれ、クープレ主題を主調で再現する(第142小節~)。16分3連音符による分散和音の推移を経てロンド主題が回帰して楽曲を閉じる。

第3楽章は、発展的な中間部とクープレ主題の主調再現をもっており、ソナタ形式的な調性配置と、動機展開的な発展をもったロンド形式といえるだろう。

K.576のソナタは、その両端楽章が多声的な発展と動機の展開に主眼が置かれており、モーツァルトのクラヴィーア・ソナタ全曲の中でも異彩を放つ作品といえる。

執筆者: 岡田 安樹浩

楽章等 (3)

第1楽章

総演奏時間:5分00秒  コンペ課題曲:E級級 ステップレベル:発展4,発展5,展開1,展開2,展開3

第2楽章

総演奏時間:4分30秒  ステップレベル:発展4,発展5,展開1,展開2,展開3

第3楽章

総演奏時間:4分00秒  コンペ課題曲:E級級 ステップレベル:発展4,発展5,展開1,展開2,展開3

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