第1楽章は慣例通りソナタ形式で書かれており、J.S.バッハのインヴェンション第2番を想起させる第1主題からは、冒頭3音の刺しゅう音によるモティーフ、2~5番目の音を繋いだ順次進行するモティーフが全楽章を通して使われている(煩雑さを避けるため各楽章の解説では反行形も含めて図でのみ示す)。また2小節目のリズム・モティーフは第1楽章で重要な働きをする。
・冒頭
・第15~18小節
第2主題は第1主題と同じく主調のハ短調で提示され、第1主題のモティーフがさり気なく且つ緊密に織り込まれている。
・第2主題(第59~62小節)
ソナタ形式において、短調の場合第2主題は、提示部では平行長調、再現部では主調ないしは同主長調というのが慣例であるため、このような調関係は異例といえる。再現部では、これも異例なことに第179小節から第1主題が変ロ短調で再現され、変ロ短調~ト短調~ハ短調と転調が繰り返される経過句の後、第219小節からの第2主題へと向かう。そのため、この41小節間は展開部の続きとも取れるだろう。第2主題は提示部同様に主調のハ短調で再現され、結句は提示部よりも拡大されている。