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モーツァルト : ピアノ・ソナタ 第2番 第2楽章 K.280 K.189e

Mozart, Wolfgang Amadeus : Sonate für Klavier Nr.2  Mov.2 Adagio

作品概要

楽曲ID: 30493
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:7分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展1 発展2 発展3 発展4 発展5

楽譜情報:10件
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解説 (2)

解説文 : 熊本 陵平 (890 文字)

更新日:2025年2月28日
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 ソナタ形式

    提示部[第一主題提示(1から8小節)→第二主題提示(9から20小節)→終結部(21から24小節)]

   

    展開部[第一主題展開(25から32小節)→移行部(33から36小節)]

    再現部[第一主題再現(37から42小節)→第二主題再現(43から56小節)→終結部(57から60小節)]

 主調はヘ短調。第一主題はシチリアーノのリズムに似たモティーフを持ち、ピアノ協奏曲第23番K.488の2楽章冒頭主題を連想させる。

 ポリフォニックな構造となっており、3声あるいは4声となっている。

 第二主題では平行調変イ長調へ転調し、16分音符の伴奏形が現れ、音楽がより流れるようになった。ポリフォニックではなく、メロディと伴奏に分かれたシンプルの構造である。メロディラインは間に短い8分休符を挟み、より表情豊かとなる。第一主題とは対照的で、さながら第一主題は器楽的な複数の楽器による合奏とするならば第二主題は静かな器楽の伴奏を背景に表情豊かに歌う声楽のようなものを連想する。

 12小節での終止定式の後、13小節のドッペルドミナントの苦しげな増六和音、上声メロディでは減5度に上行していき、次小節で力なくドミナントで解決を呼ぶ。情感豊かな楽節である。

 19小節では偽終止のⅥ和音が冒頭にあり、デュナーミクの指示がフォルテであり、ここでも感情の高まりを今一度感じる。

21小節からは終結部とするかコーダとするかは意見が分かれるところだろう。規模としては小コーダのようなもので、通常のソナタ形式のように終結部における終結主題が展開するということはなく、オクターブ下で反復されて終結する。

25小節、展開部は変ロ短調の減7和音から開始される。29小節から3声体で模倣され、ハ短調へ転調してゆく。33小節からの4小節は移行部でハ短調にて第一主題モティーフが展開されて、再現部を迎える。

再現部は37小節から始まる。この時第一主題は楽節後半での反復が省略されて6小節へと短縮される。第二主題は43小節から主調ヘ短調で再現される。57小節から終結部を迎え、主調ヘ短調で完全終止する。

執筆者: 熊本 陵平

演奏のヒント : 大井 和郎 (505 文字)

更新日:2025年7月21日
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同じ短調の曲でも、平行調を選ばず、特別な意味を持つf-mollを選んだ時点で、既に、運命的な、深刻なムードになります。多くの、増6の和音、ナポリの6など、ドラマティックな和音も多く書かれていて、悲しみの表現が入っていて間違いありません。

920小節間、左手は、ペダルを踏んでも全く問題の無いアルペジオが続きますが、このアルペジオはその殆どが転回形と言う事にお気づきでしょうか?基本形で書かれているものはわずかしか見られません。つまり、常に不安定であるという心理的描写なのです。

この曲は、器楽的か、声楽的かを考えたとき、声楽的と考えても良いのですが、オーケストラのような、ドラマティックで厳格な部分も出てきます。奏者は、歌の部分とオーケストラの部分との見分けを決め、その通りにイメージしてみてください。例えば、2526小節間は歌の部分がtopにあり、27小節目は小編成の楽器のアンサンブル、28小節目はtuttiという具合に考えます。

執筆者: 大井 和郎

参考動画&オーディション入選(1件)

演奏:米川 幸余