ペトルーシュカは、バレエ音楽《火の鳥》と《春の祭典》と並び、ストラヴィンスキー3大バレエの一つとして名高い。原曲は1911年、ディアギレフのロシアバレエ団のために作曲された。それが、ピアノ独奏曲《『ペトルーシュカ』から三楽章》として編曲、再構成されている(1921年)。演奏者によっては、オーケストラ版にあわせて、アレンジを加えたり、四幕すべてを演奏できるように編曲する場合もある。
このピアノ版は、ヴィルティオーゾとして名高い、アルトゥール・ルビンシュタインからの依頼で作曲された。「過去のどの曲よりも難しいもの」とう条件のもと作曲されただけに、難曲中の難曲といえる作品に仕上がっている。ルビンシュタインはこの曲をレパートリーとしていたものの、その完成度に満足せず、録音を残すことは許さなかった。
全音音階を用いた独特な旋律、復調性、シャープで生命感あふれるリズム、衝撃的な不協和音、めまぐるしく変化する曲想など、強烈なインパクトをもった魅力的な作品である。
ペトルーシュカは、当時のロシア農民の姿を反映したものではないかといわれている。
第1楽章:ロシアン・ダンス(第一幕)
にぎやかな祭りの雰囲気の中、魔術師によって命をふきこまれた3体の人形(ペトルーシュカ、少女のバレリーナ、荒々しい性格のムーア人)。音楽にのせて、人形たちが激しく踊りだす。冒頭から、白鍵のみを用いた平行和音での連打にはじまり、強烈な印象を与える。
第2楽章:ペトルーシュカの部屋(第二幕)
魔術師に蹴飛ばされ、場面はペトルーシュカの部屋へ。魔術師からはひどい扱いをうけ、恋をしたバレリーナからも、相手にされない。人間の心をもったペトルーシュカは、嘆き、フラストレーションをためていく。復調性でグロテスクにうごきまわる旋律が魅力的。原曲においてもピアノが活躍する楽章であり、ピアノのパートがほぼそのままの状態で移されている。
第3楽章:復活祭の市場(第四幕)
第三幕で、恋敵のムーア人にむかっていくペトルーシュカだが、逆にムーア人にうちのめされ、殺されてしまう。騒ぎ立てる聴衆に対し、魔術師は、ペトルーシュカが人形であることを説明する。しかし、人々が去り、あたりが暗くなった頃、怒りに顔をゆがめたペトルーシュカの幽霊があらわれる。魔術師はおそれ、逃げ去る。
ピアノ独奏曲用以外にも、連弾用、2台のピアノ用への編曲がある。