第4楽章 Allegro 3/4 ロ短調
初期稿から大幅に短縮されたロンド形式。冒頭の保続音ロ音が主調を保証するとはいえ、主題の付加6の和音での開始、属調の導音進行eis→fisの反復は聴く者に違和感を与える。決定的な主和音解決なしに主題確保へ入ると、主題後楽節でト長調へ転調するのを機に転調プロセスが始まる。
クプレ(第64小節∼)は、平行長調での開始、ピアノの旋律声部、躍動的な伴奏などの点でロンド主題と対照的。後半では、動機の切迫によって勢いを増した淀みない音楽の流れに、アクセントを伴う増4度と低音の半音階が介入し、和声的に不安定な局面へ移行する。
2回目のロンド主題は、ピアノによる旋律、楽器間の伴奏音形の応答など、音色、構成共に冒頭から変化が付けられる。主題確保は前楽節のみで、第137小節からロンド主題の冒頭と末尾の動機を中心とする動機操作の場となる。
移行部の素材を挟み、第205小節からクプレの再現がH-durで始まる。続いてエピソード終盤の減7和音第7音を繋ぎとして次のセクションへ移行する。ここではピアノの分散和音が主音または属音上で減7和音、9の和音を示し、和声的緊張を持続させる。
第266小節から明確なh-mollの和声進行で弦とピアノが力強い和音の応答となる。ここでトニック解決は避けられ、続く主題再現はe-mollで始まる。これは巧みな措置である。主題の原形が属調の導音進行を含むため、下属調で始めれば結果として最後の主題呈示で主調が強調されるというわけである。
もっとも主調の真の安定は遠く、コーダでもなお調は近親調を浮遊する。コーダ終盤では主題動機が音高を上げつつ連続し、主調終止カデンツに入って更に細分化、切迫して音楽が最後の高揚を見せる。最後は3小節間の主和音で曲が終わる。