この Andante con moto という表記を見ると、そこまでゆっくりなテンポではない感じもしますが、14小節目の1拍目のターンのような音符を、忙しくなく、メロディックに演奏しようとした場合や、20小節目3拍目の32分音符をを同じく、忙しくなく演奏しようとした場合、そこまで速いテンポ設定では無い事が判ります。その上でのお話になります。
例えば14~19小節間のように、左右が交互に出てくる音符、つまりは一方が表拍、もう一方が裏拍で、交互に出てくるパターンが実に多い第2楽章になります。通常、このようなパッセージを演奏する場合、片方の音量や音質を、もう片方とは異ならせる事で、硬さが取れ、音楽を横に流す事ができますが、この第2楽章のように、表拍の音符が2つ(3度)あり、裏拍が1つの音符の場合、どうしても表拍の2つの方が大きくなりがちで、この2声の音量調節は大変難しくなります。
また、45~50小節間のように、左手が3度ではなくとも、伴奏部分が表拍にあると、なかなかこれも音量調節が難しくなります。
そこで、con motoで問題を解決します。この、音符が交互に現れる第2楽章を、メトロノームの通りに、正確に弾けば弾くほど、演奏が縦割りで機械的になってしまう現象が起きます。この第2楽章は可能な限り、許される範囲内で、ロマン派の音楽に近づけてみてください。そして「方向性」を持たせること。この2つに尽きます。
例えば50小節目のピークポイントに達するとき、そこまでのシークエンスで十分な方向性を付け、50小節目で、テンポを最大限に引き延ばし、自由に歌うことで、この第2楽章の演奏は激変してきます。この第2楽章全体を、ロマン派の音楽のように、自由にルバートをかけて演奏してみてください。これが基本的なアイデアになります。