第3楽章
前奏と後奏を含むロンド形式。
前奏(第1~20小節)6/8, 9/8 非常に遅く Sehr langsam(♪69以下で)
冒頭、付点リズムを基調とするロ短調の主題が、葬送行進曲のように提示される。第3~4小節で、属長調である嬰ヘ長調を示唆しつつ、第5小節ではヘ短調の主和音、第6小節ではニ短調の主和音を響かせて、調的に不安定な状態で彷徨うように音楽が進行する。第9小節目の「進展する vorangehen」の部分から、両手の旋律が線的に織り合わされ、徐々に音量を増していくが、第13小節目3拍目をピークに音楽は再び力を失っていく。第16小節(「静かな Ruhig」)で、平穏を象徴するようなニ長調による9/8拍子の部分に移行するものの、第18小節でfで打ち鳴らされる3つの和音が調性感を一度崩壊させる。第19小節でニ長調の平穏を取り戻したかと思いきや、第20小節最後に嬰ヘ長調の主和音を提示する。
ロンド(第21~197小節)2/2, 3/2 活発に Bewegt(2分音符100-108)
全体は、A/B/A’/C/A”/D(前奏の再現)/A/B’/A’”/Coda
前奏から音楽的性格を激変させて急速に始まるAは、忙しないほどに活発な性格を維持しながら第32小節まで続く。同小節2拍目からBが開始し、p~fに向かって同一音型を反復するが、第40小節を頂点として音楽は急速に衰微していく。第46小節からAが変奏的に回帰し、第54小節からはAの右手の旋律が左手に移り、同部分で奏でられる右手の和音の上声部は音楽に推進力を与える(A’)。第65小節2拍目からCが始まり、右手の2度下行+3度下行+3度下行の4音音型が反復されつつ、音域を1オクターヴ上げて緊張感を高める。第79小節からは左手の半音階的な旋律を伴いながら、右手の音型がタイによって拍節感を崩すことで、Cのもつ即興性が誇張される。第101小節以降Aが再び変奏的に回帰するが(A”)、第125小節4拍目から、前奏のロ短調主題がト短調に移調して再現される(D)。前奏部分とは異なり、速度も音量も上がって、さらに付点リズムは排されて再現・拡張されるため、激情的で悲痛な印象を与える。音域を段階的に引き上げ、第150小節で音量もffまで到達するが、第152小節を頂点として音楽は急激に停滞していく。第163小節3拍目からは、最初のA(第22~32小節)がそのまま変わらずに再現される(A)。第174小節2拍目からBに回帰するが、ここでは右手の特徴的な音型(第33~34小節)の変形が経過的に反復される。第186小節3拍目で、ホ長調の主和音をfで打ち鳴らして象徴的にAに回帰するが、「徐々に遅くなって langsamer werden」ppに至るまで、断片的に再現されるに留まり、静かにロンドを閉じる。
後奏(第198~203小節)9/8 遅く Langsam(♪69以下で)
前奏第16小節から始まる部分が変ホ長調で回帰する。前奏と同様に、第200小節の3つの和音が調性感を打ち消した後、再び変ホ長調が回復するものの、第1楽章を締め括ったト長調の主和音で極めて静かに音楽が終わる。