第一次世界大戦が始まり母国であるスペインで6年間過ごしていたモンポウは、1917年から1919年にかけてこの曲を作曲した。神秘的で、演奏効果の高い以下の5曲からなる。恩師であるラクロワに献呈された。いずれの曲も小節線はほとんどなく、きわめてシンプルな書法によってかかれている。霊感に満ちており、そのオリジナリティの高さから、パリの評論家たちからも高い評価を得た。同時期の作品に《郊外》や《子供の情景》などがある。演奏標準時間は約10分。
1.力強い / No.1 "Energic":広音域での力強い和音は鐘のように響き、大気を震わせる。ピアノの楽器を正しく鳴らすことが求められる。レントでは対照的な静けさがあり、その中で歌が静かに歌われる。最後の部分では倍音を意識して効果的に音を重ねるとよいだろう。
2.闇の / No.2 "Obscur":単音ではじまる「葬列」のような旋律は和音を伴って徐々に近づいてくる。3段譜になっている次の部分では、雰囲気は一変する。高音域では金属的な響きが輝かしく鳴り、中音域では、目がさめるような旋律が劇的に歌われる。バスは、低音域でそれらを支え、つきあげるようになりひびく。外観はシンプルでありながらも、これらは非常に効果的な響きをつくりあげている。再びはじめの旋律があらわれ、最後は消えるように曲を閉じる。
3.深く-レント / No.3 "Profond - Lent":長二度、短二度ずつずれながら微妙に推移していく旋律の合間をぬってEs音が一定に打たれていく。これらはそれぞれ独立した動作の中でならされる必要がある。中間部では「少し風がふくように」と記された装飾音が加えられ単調なリズムの中に儚くも美しい光が与えられている。
4.神秘な / No.4 "Misterios":《魔法の歌》の中でも最も劇的で神秘的な雰囲気をもつ曲。右手の動きとは無関係に打たれる左手のC音が怪しげに、しかし徐々に何かを予感させるようにきこえてくる。つづく16分音符で上下する音形は、きくものを一気に幻想的な響きの渦へと誘いこむ。トランクィル・トリストでは遠い意識の中、遠くで鐘の音をきいているようだ。
5.安らかな / No.5 "Calma":長音で伸ばしている音の上に重ねられる和音によって、響きが波紋のように広がっていく。中間部は対照的に動きをもって。最後は鐘の音が徐々に遠くなり消えるように曲をとじる。