ギロック : こどものためのアルバム 古典形式によるソナチネ
Gillock, William : Album for chirdren Sonatina in classic style
作品概要
ジャンル:ソナチネ
総演奏時間:4分00秒
著作権:保護期間中
解説 (1)
演奏のヒント : 杉浦 菜々子
(1041 文字)
更新日:2025年7月21日
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演奏のヒント : 杉浦 菜々子 (1041 文字)
第1楽章(Allegro deciso)は、明快で構築的な印象を持ち、ハイドンの作風を思わせる趣があります。主題と響きの対位的な動きが特徴であり、全体として音の質感を大切にしながら、軽くならないように重厚さを保ちたいところです。テンポは一定に保ちながらも、3、6小節や9〜10小節目など、自然な推進力を感じる場面では小気味よく前に進むことが求められます。アーティキュレーションを丁寧に弾き分けることが重要で、とくにテヌートがついたスタッカートは音をしっかり保ち、左右の手の重なりによって生まれるハーモニーに耳を傾けたいところです。24小節以降は臨時記号が多く、演奏者にとって弾きにくさを感じやすい部分です。黒鍵の部分を避けた運指もある中、すべて5の指から始めることで統一された指使いが可能になります。音の難しさと指使いの難しさが重なるときは、あえて5の指を使う運指を提案するのも一つの方法です。
第2楽章(Andante con espressione)は抒情的な性格を持ち、右手の旋律と左手の伴奏との対話が印象的です。冒頭に記された“cantabile”の指示のもと、穏やかで滑らかな流れを保ちながら演奏したいところです。左手の順次進行に支えられつつ、旋律は水平的に進めていくと自然な表現になります。装飾音のターンはその部分だけを取り出して練習し、軽やかなタッチで演奏できるようにしたいです。5小節目のように同音で進む旋律はレガートが途切れやすいため、音のつながりを意識したい場面です。弦楽器の弓遣いをイメージし、なめらかなフレージングを心がけましょう。16小節3拍目以降は場面が転換し、跳躍音程や付点リズムが特徴的です。はっきりとしたフォルテで演奏を開始し、徐々に静かな場面へと戻っていく流れを表現できるようにしたいところです。
第3楽章(Rondo: Allegro vivace)は、軽快なロンド形式による終曲で、リズミカルかつ遊び心を感じる楽章です。拍感をしっかり持ちながらも、強拍を過度に強調しないように注意し、自然な流れを保ちたいところです。形式としては4拍子ですが、2拍子のリズムに乗ってアウフタクトから3拍目まで一気に弾ききるようなイメージで演奏すると良いでしょう。曲中に多く登場するスケールは、やはり2拍子のリズム感を基盤に、爽快に駆け抜けるように弾けると、演奏する楽しさを体感できるはずです。生徒たちにも、こうした身体的な楽しさをぜひ味わってもらいたいと思います。
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