バッハ : カプリッチョ 「最愛の兄の旅立ちにあたって」 アリオーゾ:アダージョ BWV 992
Bach, Johann Sebastian : Capriccio 'Sopra la lontananza del suo fratello dilettissimo' Arioso: Adagio
作品概要
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:カプリス
総演奏時間:2分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
演奏のヒント : 大井 和郎
(672 文字)
更新日:2023年10月30日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (672 文字)
まずこの曲は2重唱とお考え下さい。女性歌手が2人歌っていると想定します。2重唱の書法ですので、かなりの数の6度が出てきます。
この6度という音程は、ピアノにとって粗が目立ちやすい音程です。なぜなら、内声は必ず1か2の指でこれらは強い指でバランスが保ちにくいのと、1-1などの指番号の場合声部が切れてしまいます。一方の上声部は4か5の指になるため、弱い指で音が出しにくいのと、やはり5-5等の指番号では声部が切れてしまいます。
故に、この曲にペダルは必須で、ありとあらゆるところに、一瞬だけ、濁りを避けた上でバランスを取り、声部を綺麗に繋ぐようにします。これがまず1つ。
次に、このアリオーソは全部で9つのフレーズがあると仮定します。ト音記号で、休符 が出てきた部分がフレーズの終わり、新たなフレーズの始まりと考えます。奏者は各フレーズが前後のフレーズと比べて、テンションの高さを考え、強弱によって、差を付けるようにします。
例えば、1つ目のフレーズは1小節目2拍目から始まり、2小節目の1拍目までです。2つ目のフレーズは2小節目2拍目から始まり、3小節目1拍目までです。この2つを比べた場合、明らかに2つ目のフレーズの方がテンションは高いので、2つ目のほうの音量を1つ目よりも大きくします。
このアリオーソは2箇所のピークポイントがあり、1つ目は、11小節目で、メロディーラインがFに達するところ。もう1つは、15小節目の1拍目です。
全体のムードは悲しみの表現でもありますが、ピークポイントとと言ってもあまり大きすぎる音量で弾かないように注意して下さい。