スカルラッティ, アレッサンドロ :メヌエット ハ長調
Scarlatti, Alessandro:Minuet C-Dur
演奏のヒント : 大井 和郎 (499文字)
この曲を演奏するにあたり、注意点を述べます。
1 フレーズ
フレーズは4小節単位で現れる事が多いです。その際に、そのフレーズの何処がお山のてっぺんであるか、麓であるか、見極め、強弱をコントロールしてください。
2 シークエンス
後半では5小節間にも及ぶシークエンスが出てきます。上行していますので、pから始め、音量を少しずつ上げて行くようにします。決してこの部分が平坦にならないようにして下さい。
3 トリル
この曲の最も重要な部分と言っても良いほど、トリルの部分は流暢に弾かなければなりません。
このトリルによって、曲の魅力が左右されます。速い、軽いトリルは必須です。
4 ピークポイント
13~16小節間、35~38小節間、がこの曲のピークポイントになります。よく見るとこれら2つの波形は似ていますね。特に、a-mollセクションのテンションを上げるようにします。
30小節目より16分音符が入って音符が細かくなります。限られた時間内に多くの音が入れば入るほど、ピアノという楽器は音量が上がります。それを見越して、16分音符を軽く、弱い音量で演奏する事で、細かい音符が入ってきても、全体の流れの妨げにはなりません。
解説文 : 熊本 陵平 (1097文字)
三部形式である。
A[a(1から4小節)+b(5から8小節)]
B[c(9から12小節)+d(13から16小節)]
A1[a(17から20小節)+e(21から29小節)]
コーダ(30から38小節)
主調はハ長調。主題の始まりは三つの四分音符上行、全体の構成としてはメヌエットらしい三拍子のリズムを感じさせる旋律となっている。
5小節目より属調(ト長調)に部分転調する。8小節目で属調による全終止を迎える。9小節では8小節と同じ和音が使われているが、これは和声分析上では主調ハ長調に戻っており、ハ長調の属和音である。これが12小節においてハ長調としてはⅥ和音によって和声解決されている。
この9から12小節は転調における移行部分で、特に9から10小節はハ長調の属和音、11小節はイ短調の属和音(ハ長調においてはイ短調からの借用和音Ⅵ調上Ⅴ=ドミナント扱い)で、実質11小節からイ短調に転調はしているものの、ハ長調の和声カデンツとしての和声解決は12小節を待たなければいけない。したがって、音楽表現としては11小節から12小節でイ短調に転調したということだけでなく、9小節のドミナント和音は実は12小節において和声解決されるのだという横の流れを意識した方が良いだろう。
14小節からはヘミオラ終止を迎え、イ短調の全終止によって楽節が一旦閉じられる。16小節2拍目左手のg音からの下行順次進行により、イ短調から別の調へ転調されることが予兆されている。
17小節より4小節間で主題の再現が行われる。その後、21から25小節は上行進行によるゼクエンツとなり26小節でⅥ和音によっていったん偽終止、29小節で改めてⅠ和音による全終止となって楽節が終結する。
この主題再現を冒頭に置くA1楽節はそれまでの楽節と比べ21から25小節のゼクエンツが挟まれる形となり、やや長大となる。古典派以降多くの楽曲において、基本的には楽曲中の各楽節は均等な大きさであることが多いが、バロック時代の音楽においてはしばしばこうした不均等な構成を見かける。
コーダは21小節からの流れを変奏していると考えられる。30から34小節は旋律のモティーフこそ異なるが、似た和声進行、バス進行による上行していくゼクエンツである。より音価の小さい16分音符が使われることにより、活発な印象を与える。37から38小節でトリルによって終結する。
【2024ピティナコンペ課題曲】メヌエット ハ長調
メヌエット ハ長調
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