平和の象徴であり、ほのぼのとしている鳩の鳴き声は、よく聞いてみると色々なリズムパターンがあります。鳩は案外高速で飛行しており、また恋多き鳥である事をご存じでしょうか。この作品では、そんなお嫁さん大募集中の鳩たちが、スペインのカタルーニャ広場に集まって、愉快に合唱し、天敵のカラスの邪魔が入るまでのストーリーを表しています。鳩の鳴き声や、予測不能な首の動きを、独特のリズムや不協和音、遠隔調への転調、変拍子等で表現していますので、物語を想像し、色鮮やかに表現して頂ければ幸いです。
■曲の構成
[A] - [B] - [A’] の三部形式。
■調性について
[A] Es dur → As dur
[B] G dur → f moll
[A’] Es dur
■演奏のポイント
[A]
1~6小節目の左手の和音は鳩の鳴き声を、また時折右手に出てくるトレモロは、鳩がグルグルと喉を鳴らしている様子を表していますので、コミカルに表現しましょう。
[B]
15~19小節目まで7/8拍子→6/8拍子→5/8拍子→6/8拍子(ヘミオラ)→3/4拍子と目まぐるしく拍子が変わります。しっかり拍子感を持って、リズミカルに演奏しましょう。また、この部分はスパニッシュ・スケール(G-As-B-H-C-D-Es-F)で書かれていますが、カタルーニャ広場で、雄の鳩たちが、雌を巡って次々とアピールしているかのように、生き生きと情熱的に演奏しましょう。20小節目、3拍目の裏は歯切れよく止音して。21小節目は全て休符ですが、直前の20小節目からの緊張感をしっかり保ってください。22~31小節目までは、[A’]への移行部であり、ドリア旋法(F-G-As-B-C-D-Es)で書かれていますが、協奏曲のカデンツァのように自由に歌いましょう。(6度の音程で並行に動く所は、夕暮れ時に、番いとなった鳩が寄り添うように綺麗に響かせて)
[A’]
32~42小節目までは、鳩たちが広場に集まり、愉快に大合唱している様子を表しています。43小節目の1拍目で突然、カラスの襲撃に遭いますが、同小節2拍目から団結して応戦、見事にカラスを追い払い、終局を迎えます。[A’] も変拍子になっており、テンションコードが何度も出てきますので、最後まで緊張感を保って。最後の和音はしっかり止音して、歯切れの良いダイナミックなラストにしてください。