映画音楽『ボヴァリー夫人』(Op. 128)から作曲者自身が編作したもので、ジャン・ルノワール監督に献呈された。本作の姉妹篇《ボヴァリー夫人のアルバム》(Op. 128b)の拙稿も参照されたい。夢見がちでセンチメンタルな曲想は、クラシカルな文芸映画のワンシーンそのものといえ、味わい深い。ピアノ版では特に各曲にタイトルは付されていないが、本作の管弦楽版には第1曲ロマンティック(Romantique)、第2曲ノスタルジック(Nostalgique)、第3曲エフェメール(Ephémère はかなげに)とある。フランスには「3つのワルツ」を作曲者自身あるいは他者が三題噺ふうに仕立てる、シャブリエの頃からの慣習がある(2台ピアノをやる者にはよく知られたエピソードで、シャブリエの《3つのロマンティックなワルツ》についてコルトーが、3人の女性の肖像であるとやらで曲毎に形容詞を与えた。それ以降も多くの作曲家が「3つのワルツ」を書いた)。ここでもそのひそみにならったのであろう。
第1曲 変ロ長調(調号なし)4分の3拍子。符点二分音符 = 60。
第2曲 変ト長調(調号なし)4分の3拍子。符点二分音符 = 60。
第3曲 ニ長調(調号なし)4分の3拍子。符点二分音符 = 60。