《ママのために弾きましょう》(1937年刊)の次のレベルの曲集である。企画は早くから上がっていたはずだが、第二次世界大戦のあおりで出版が戦後の1956年となり、《ママ》から20年近く間が空いてしまった。そのせいもあって《ママ》や《子供のために》(1934年刊)のように知られることもなく、1曲ずつのわずらわしい分売制も時代に合わず、タンスマンの教育作品の中では地味な存在に埋もれてしまったうらみがあった。しかしその内容は、簡素ながらも両手によるポリフォニーに焦点をあてた曲が多く、教育的価値はきわめて高い。基礎後期段階(メトードローズ修了、バイエル終盤程度)の学習者がとりくむのに最適であろう。1曲見開き2ページずつの体裁は《ママ》と同じでも、音楽的な密度と緊張度は格段に高くなっている。オクターヴ奏こそないが、8度の音の移動も出てくる。レッスンでは学習者を丁寧に指導したい。2006年に合冊版が出て入手が容易となった。好個の併用曲集としてぜひレッスンに積極的に取り入れていただくとよい。
第1曲 Aux champs 野原で Modéré(中庸に) 4分の4拍子 ハ長調
第2曲 Orgue de barbarie 手回しオルガン Lento(おそく) 4分の3拍子 イ短調
第3曲 A la pêche 釣り Modéré(中庸に) 4分の4拍子 ト長調
第4曲 Air familier de papa パパのいつもの歌 Modéré(中庸に) 4分の3拍子 イ短調
第5曲 Les petits soldats 小さな兵隊 Assez vif(十分に速く) 4分の4拍子 ニ長調
第6曲 Bateux à voile 帆かけ船 Modéré(中庸に) 8分の6拍子 ホ短調
第7曲 L’Ourson 子熊 Modéré(中庸に) 4分の4拍子 イ短調
第8曲 Petite polka 小さなポルカ Vif(速く) 4分の2拍子 ハ長調
第9曲 Valsette 小さなワルツ (速度記号なし) 4分の3拍子 ト長調
第10曲 A trois temps 三拍子で Modéré(中庸に) 4分の3拍子 ハ長調
第11曲 Petit problème 小さな問題 Assez vite(十分に速く) 4分の4拍子 イ短調
第12曲 Air sérieux おごそかな歌 Modéré(中庸に) 4分の4拍子 ハ長調