森山良子の歌う「さとうきび畑」の作詞作曲者として一般にも広く知られる寺島尚彦さん。生前、プロフィールには「作曲家(クラシック・ポピュラーを問わず)」と自ら明記し、ジャンルの垣根を越えて活躍された方である。ピアノ連弾も好み、オリジナル曲では、いわむらかずおの絵本に書いた「14ひきのシリーズ」(14ひきのあさごはん [1985]、さむいふゆ [1988]、おつきみ [1989])が親しまれている。ほかにも連弾の編曲集を数多く発表した。これはそのうちの一冊。おなじみのクリスマスソングの手慣れたアレンジはもとより、オフコース唯一の知る人ぞ知る幻想的なクリスマスナンバー「クリスマス・デイ」、クリスマスというよりウィンターソングの定番「白い恋人たち」(フランシス・レイ)を収載しているのが寺島さんらしい。「白い恋人たち」のアレンジについて自ら「ちょっとシックなシャンソン調」とこともなげに言うが、寺島さんは自身の率いる楽団「寺島尚彦とリズムシャンソネット」で日本のシャンソン歌手の草分け、石井好子のバックを務めるなど、誰よりもシャンソンへの造詣が深かった。「さとうきび畑」にしても、石井好子と共に米軍統治下の沖縄各地を回る中で着想を得たものだったという。チャイコフスキーのくるみ割りからのアレンジや、オールシーズン使えるバッハも大変貴重。大切にしたいアルバム。
第1曲 Der Tannenbaum もみの木 Maestoso 3/4 ヘ長調
第2曲 Silent Night 聖夜[きよしこの夜](グルーバー)Andante 6/8 変ロ長調
第3曲 Jingle Bells ジングルベル Allegro 2/4 ヘ長調
第4曲 Christmas Day クリスマス・デイ(作詞・作曲 小田和正、鈴木康博)Moderato 6/8 ハ長調
第5曲 13 Jours en France 白い恋人たち(フランシス・レイ)Waltz moderato 3/4 ト短調
第6曲 Danse de la Fée-Dragée こんぺい糖の精の踊り(チャイコフスキー)Allegretto tranquillo 2/4 ホ短調
第7曲 Danse Russe Trépac ロシア舞曲 トレパーク(チャイコフスキー)Vivace 2/4 ト長調
第8曲 Jesu, Joy of Man’s Desiring 主よ人の望みの喜びよ(J. S. バッハ)Allegretto semplice 3/4 ト長調