1946年、タンスマンがアメリカ滞在期に書いた学習者向きの曲集である。現在流通してい

るエシック版（2008年刊）は、実質的に、以前アライアンス関係にあった米国AMP社

（Associated Music Publisher）の初版のリプリントである。現行版では英仏併記だが、英

語のタイトルがオリジナル。緩急とりまぜた10の小品からなり、速い曲は端整に引き締ま

った新古典風、遅い曲はしっとりしたムードの洗練されたロマン派あるいは印象派風にま

とめられている。調性感が明瞭に出ている点では学習者向きといえるが、全体の難度は高

めで、チェルニー40番程度の技術を要する。《子供のために》や《ピアノを弾く若者》で

いえば、各々の最終巻（第4巻）に相当し、タンスマンの一般のピアノ曲に匹敵する難所

もある。レッスンでは、ソナタアルバムまで進んだ学習者の併用曲集として使うとよい。

華のある曲が多いから、発表会やリサイタルのレパートリーにも適していよう。なお、デ

ィヴァージョンとはディヴェルティメントと同義で「気晴らし」ほどの意味。ベンジャミ

ン・ブリテンの左手ピアノと管弦楽のための協奏作品（Op. 21）が日本で一般に「ディヴ

ァージョンズ」と紹介されるのに倣い、ここでも「ディヴァージョン」とする。