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近藤 浩平 : ピアノソナタ 第2番 「徳山村の記録」 作品220 Op.220

Kondo, Kohei : Piano Sonata No.2 Op.220

作品概要

楽曲ID: 83336
作曲年:2023年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ

解説 (3)

解説 : 杉浦 菜々子 (262 文字)

更新日:2024年6月6日
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藤本辰也・杉浦菜々子による共同委嘱で、2023年12月3日杉浦菜々子により初演された。

4つの楽章からなるピアノソナタ。近藤浩平のピアノソナタとしては二作目。

前作の「左手の為のソナタ『高層湿原への旅』(ピアノソナタ第1番)~舘野泉のために~ 作品134」は、舘野泉と左手の文庫の委嘱により2013年に作曲され、2014年9月28日に長野県小海で舘野泉のピアノで初演された。両手のピアノのためのピアノソナタとしては第2番が初。

※この解説は、公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーションによる助成を受けて制作いたしました。

執筆者: 杉浦 菜々子

解説 : 近藤 浩平 (730 文字)

更新日:2024年6月6日
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【作品解説】

このソナタの第3楽章は、「徳山村への哀歌、沈める村」、第4楽章は「徳山村への哀歌、源流の村」との副題が付けられている。

徳山ダムは、岐阜県木曽川水系揖斐川上流に2008年に完成した巨大なダムである。貯水量は浜名湖の水より多いという。このダムの建設の為、徳山村は全ての人が離村し地図から消えた。

有名な観光地、景勝地以外の多くの日本の山村の自然と生活は、この数十年の間に都会人の目につかないところで、次々と消えてしまっている。

私がこの村の最奥の冠山を登山した帰路に訪れた時には、すでに離村が済み、湖底に沈む部分の樹木は無惨に伐採され、水をためる前の荒涼とした風景だった。

この村の最後をとらえた増山たづ子さんの素晴らしい写真集がある。

徳山ダムが完成した2008年にオーケストラ曲「徳山村への哀歌、沈める村」と「徳山村への哀歌、源流の村」を作曲した。様々な作曲コンクールなどに応募したりオーケストラ関係者にコンタクトしたりもしたが初演される機会がないまま現在に至っている。この作品は、徳山村という一つの村が沈んだということがきっかけで作曲したものではあるが、過疎などで急速に失われつつある日本各地の山村の暮らしそのものについての愛惜の音楽でもある。

かって、学生の頃に訪れた山村で多くの人が暮していたところが、近年、再訪すると過疎や高齢化で廃屋と荒れ野となった耕作放棄地で荒涼とし、村の祭りなども維持できなくなり、生活の文化も急速に失われつつある。日本の山村の音楽の感触のある旋律と、それをあるときは脅かすように、ある時は穏やかに包むように、ある時は痛切な愛惜と怒りと不安を表出するように、あるときは、はるかな時間の不思議さを喚起するように響く音響が交錯する。

執筆者: 近藤 浩平

解説 : 高久 弦太 (442 文字)

更新日:2025年7月21日
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近藤浩平には2024年12月時点で3つの「ピアノソナタ」があり、第1番にあたる《左手の為のソナタ『高層湿原への旅』~舘野泉のために~》(左手の文庫の委嘱作品)は舘野 泉により2013年に初演。《ピアノソナタ第3番アメリカの爆弾~被爆ピアノのための~》は広島弁の弾き語り付きの作品で清水友美により2024年に初演。一方、この第2番は両手のピアノ演奏だけのための全4楽章の大作であり、初演者の杉浦菜々子に捧げられている。第三楽章と第四楽章はオーケストラ作品《徳山村の哀歌》のピアノ編曲である。第一楽章は前半反復記号付きのソナタ形式の楽章で、形式こそ古典的な「ソナタ」を踏襲してはいるが、テーマ、和声、音色、リズム、展開は近藤独自の作曲様式を示す。第二楽章はスケルツォ的な楽想で、疾走感のある楽章。インテンポで弾き切ることが求められる。第三楽章は最も劇的な楽章で広い音域を使って十全にピアノが響くように配慮されている。第四楽章は源流へと向かって段階的に昇華する情景がミニマルに描き出される。

執筆者: 高久 弦太

楽章等 (4)

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