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フィリップ :《トッカータ》(原曲:ヴィドール)2台ピアノ

Philipp, Isidor:Toccata [Symphonie pour orgue No. 5, Op.42-1] (Ch. M. Widor)

作品概要

楽曲ID:90015
出版年:1894年 
初出版社:Hamelle
楽器編成:ピアノ合奏曲 
ジャンル:トランスクリプション
総演奏時間:6分00秒
著作権:要調査

解説 (1)

解説 : 西原 昌樹 (816文字)

更新日:2024年6月16日
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イシドール・フィリップが、ヴィドールのオルガン独奏曲《トッカータ》を2台ピアノ用に編曲したもの。フィリップは1886年にヴィドールのピアノ協奏曲第1番 Op. 39 のソリストを務めたのを契機に、師サン=サーンスの紹介でヴィドールの知遇を得た。フィリップにとってヴィドールは19歳年長の楽壇の大先輩であったが、2人はすぐに打ちとけ、うまの合う友人同士となった。古典を重んじる音楽的志向はもとより、虚飾を嫌い、刻苦精励を好む剛毅、勤勉な気質においても共通していたからであろう。パリ音楽院に奉職する教授仲間でもあった彼らは、週に一、二度、共通の友人知人も交えて昼食を共にする習慣を実に30年もの間、続けたという。ヴィドールはフィリップに新たにピアノと管弦楽のための幻想曲 Op. 62を書き下ろしてヴィドールの指揮のもとフィリップが初演、フィリップはヴィドール作品を生涯のレパートリーとした。2人は2台ピアノでもたびたび共演している。《トッカータ》はオルガン交響曲第5番 Op. 42-1 の第5楽章(終楽章)で、ヴィドールの代表作の一つ。アレグロ、2分の4拍子、ヘ長調。華のある壮麗な楽想から、現在ではとりわけ欧州のロイヤルウェディングのセレモニーを飾る最重要のナンバーとして定着している。2011年4月、英国の現皇太子夫妻の婚儀は全世界に中継され20億人が視聴したが、その最もドラマティックな瞬間にひときわ高らかに鳴り響いたのはヴィドールのトッカータであった。フィリップの編曲はステンドグラスのように鮮やかな色彩感と曇りなく澄みきった爽快感を2台ピアノで余さず再構築するもの。オリジナル作品に準ずる特別の価値を持つ編作である。フィリップ自身のレパートリーでもあり、親友のアルノルト・ライトリンガー(Arnold Reitlinger)や門弟のセシル・ドローシュ(Cécile Deroche)らと組んで本作を弾いた記録が残っている。

執筆者: 西原 昌樹
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