マルクル 1816-1887 Markull, Friedrich Wilhelm
解説:上田 泰史 (1206文字)
更新日:2018年3月12日
解説:上田 泰史 (1206文字)
ヴィルヘルム・フリードリヒ・マルクル Friedrich Wilhelm Markull 1816.2.17 ライヒェンバッハ-1887.4.30 グダニスク没 ドイツのオルガン奏者、ピアノ奏者、作曲家。当時プロシア領内に位置していたライヒェンバッハ(現ポーランド領)に生まれる。エルブロンクの聖アンナ教会の楽長を務めていた父からピアノとオルガンの手ほどきを受け、10歳のときにカール・クロスKarl Kloss(1792~1853)にピアノを、クリスティアン・ウルバンChristian Urban(1778~1860)に和声を師事しました。前者のクロスは、『クラヴィーア教本』で知られるダニエル・ゴットフリート・テュルクに師事した音楽家で、エルブロンクでオルガニストを務めたのち、バルト海に面するプロイセン王国の街ダンツィヒ(グダニスク)の楽長を務めていた。後者のウルバンもまた、同職のためにダンツィヒに居住していた音楽家である。 33年、マルクルはデッサウに移り、宮廷楽長フリードリヒ・シュナイダー(1786~1858)に作曲とオルガンを師事。35年の春にダンツィヒに戻り、ピアノ教師として生計を立てた。翌年、同地のマリア教会(当時世界第二の規模を誇るルター派教会)の主席オルガニスト、ならびに同地の声楽協会長に任ぜられる。45年、同地のギムナジウムで声楽教授も任されるようになり、2年後には「王の楽長」の称号を与えられた。演奏会活動に加え、同地の雑誌で批評家としても活動し、半世紀に亘り、ダンツィヒの音楽界の興隆に大きく寄与した。 彼が生涯に出版した作品は、作品番号にして137作を数え、それ以外に作品番号なしの作品には喜歌劇《ヴァルプルギスの宴》、編曲(ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトの交響曲)、校訂(モーツァルトの歌曲、シューベルト、ウェーバー作品集)、オルガンの為のオリジナル作品などがある。創作の重点は声楽、ピアノ、オルガンの為の作品に置かれている。ピアノ作品に関しては《4つのマズルカ》作品4、《ポロネーズ》作品67などの舞曲、《旅に臨んで――9つの幻想曲集》作品45や《森の生活――音画》作品53などシューマンに通じる性格小品集、俗謡を主題とした《ドイツの俗謡に基づく描写集》作品46、47、54、《バラード》作品66、《舟歌》作品68などの中規模作品がある。 参考文献 -New Grove Online -François-Joseph Fétis, « Markull (Frédéric-Guillaume) », Biographie universelle des musiciens et bibliographie générale de la musique, vol. 5, Paris, Firmin-Didot, 1878, p. 458.