スカルラッティ, ドメニコ : ソナタ ハ短調 K.11 L.352
Scarlatti, Domenico : Sonata c-moll K.11 L.352
作品概要
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:2分10秒
著作権:パブリック・ドメイン
ピティナ・ピアノステップ
23ステップ:発展1 発展2 発展3 展開1 展開2 展開3
楽譜情報:4件解説 (2)
執筆者 : 丸山 瑶子
(848 文字)
更新日:2010年1月1日
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執筆者 : 丸山 瑶子 (848 文字)
ソナタ K1. - K.30について
スカルラッティの鍵盤のためのソナタのうち、概ね推定される作曲年代に基づいて番号付けされたカークパトリック番号でK. 1から30まではEssercizi per Gravicembaloとして出版され、騎士階級を下賜された返礼として、ポルトガル王ジョアン5世に献呈された。(なおこの曲集は一般的に《チェンバロのための練習曲集》と訳され、またスカルラッティの鍵盤楽器のための作品は主にチェンバロ用と推定されているが、研究の現状では、チェンバロ以外の鍵盤楽器が完全に想定外であるかははっきりしていない。)これは生前に唯一、作曲家自身が出版した曲集で、その序文は作曲家自身による真正な文書資料としての価値を持つ。
序文では、曲集が演奏技法の修練を目的としていることが示唆され、彼が音楽教師として仕えたマリア・バルバラの日々の練習用という実用的な目的で書かれたと推測できる。作曲年代に関しては、Esserciziはかなり前に書かれたソナタを推敲したものとして、多くの研究者が早期の作曲年代を主張しているが、結論は未だに出ていない。
全30曲の配列は発展的学習を可能とするもので、後の作品になるほど長く、難しくなるよう並べられている。形式は2部形式を基本とする。また作品の冒頭が両手の短い模倣となるのはスカルラッティのソナタに典型的で、多くの場合、模倣となるのは作品の残りの部分の主要素材と見たところは関連が薄いと思われる音形である。
なお序文には曲集全体の音楽的内容に触れた言葉もあるが、その解釈については、序文が謙遜や建前の入りやすい文章であることも手伝って、繰り返し議論されている。
K. 11 Allegro
様々なリズムで執拗に繰返される音階下行の4度の音程が全体に統一性を与えている。両手が交差し、全体的に使用音域が高音へ集中している。左手がcを下回るのはカデンツのみである。このように低音の使用を重要な箇所のみに限定するのは、スカルラッティがしばしば用いる手法である。
演奏のヒント : 大井 和郎
(430 文字)
更新日:2025年7月21日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (430 文字)
c-mollで書いてあるソナタですが、楽天的な要素は見られず、美しさ、そして多少のドラマティックな圧迫感もある曲です。冒頭、8分音符と4分音符で、厳粛に始まりますが、曲が進むにつれて徐々に16分音符が入ってきます。そして曲が進むにつれて、左右の手が離れていき、前半を終了します。後半も同じく、4分音符と8分音符から始まり、曲が進むにつれて16分音符が入ってきて、最後に重厚な和音とともに左右の手が広がります。
つまりは、前半後半ともに、最後の小節に向かって進んで行くような方向性が必要になります。前半後半共にpから大人しく始まり、徐々に音量を増し、最後の小節に達する流れを作って下さい。10〜12小節間、24〜26小節間、同じフレーズが続きます。同じフレーズが続くとき、ついつい片方はフォルテ、片方はピアノにしてしまいがちなのですが、ここは3小節間で音量を徐々に上げて、カデンツに達してください。後半の最後は少しテンポを緩め、ドラマティックに終わるようにします。