メンデルスゾーン : ピアノ三重奏曲 第2番 第3楽章 Op.66 Q 33
Mendelssohn, Felix : Klaviertrio Nr.2 Scherzo. Molto Allegro quasi Presto
作品概要
楽器編成:室内楽
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:4分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
解説 : 丸山 瑶子
(627 文字)
更新日:2023年12月19日
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解説 : 丸山 瑶子 (627 文字)
大まかにはABABAの5部分に分けられるスケルツォで、旧来の図式に当てはめればA部を主部、ト長調のB部をトリオと捉えることができる。ただし各部分の対応関係は薄く、構成は互いに大きく異なっている。
冒頭から楽章の末尾までゲネラルパウゼのない無窮動の楽章で、全体的に強弱の抑えられた弦楽器の素早く軽い動きによって、いわゆるメンデルスゾーンの「エルフのスケルツォ」が作り出されている(《真夏の夜の夢》のスケルツォが代表的)。音形や旋律の割り当てからすれば、楽章の大部分で弦楽器2つが対で扱われているが、弦とは別の動きをするピアノが突出することもない。むしろピアノの大振りな動きは避けられ、さざめくような弦楽器と溶け合っている。
形式面に注目すると、それぞれのセクションはさらにいくつかの細かい部分に分かれており、個々の部分は同じ音形が周期的に繰り返されるシンプルな構造になっている。しかし各部分の内部が分かりやすく周期的に区切られるのとは対照的に、大きなセクション同士の区切りは不明瞭で、気づいたら次のセクションが始まっているという印象を受ける。ここには無窮動で続く音楽の流れの中で、執拗に繰り返されていた動機に微細な変化がつけられたり、同じ楽句が反復される最後に新しい動機が加わったりするといったように、直前までの音楽に少しずつ手を加えながら移行に入るというのが理由の一つだろう。A部の冒頭が回帰する時には、模倣書法も区切りを不明瞭にする要因になっている。