作品概要
出版年 1938年
初出版社 Max Eschig
楽器構成 1台4手
総演奏時間 9分(各曲30~60秒)
タンスマンの教育用の4手連弾作品の中で最も平易なものである。導入から基礎段階の学
習者同士で無理なく弾くことができる。副題は「大きな音符によるとてもやさしい小品集
」(Morceaux très faciles en grosses notes)。「ママ聞いてね」といった邦題もみられる
。第10曲でリディア旋法が用いられるほかは、完全にディアトニックな書法で書かれ、ロ
マンティックで親しみやすい佳品が並ぶ。セコンドも伴奏にとどまらず積極的に対位法を
担い、アンサンブルの楽しさを体感できる。両パートの難易度が丁寧にそろえられ、奇を
てらわない平明な楽想に高い芸術性がそなわった導入期の連弾曲として貴重なものと言え
る。応用段階まで進んだ学習者同士の初見合奏の教材としても有益であろう。
本作品の有用性はかねてから高く評価されてきたが、教育の現場では今もって充分に普及
しているとは言いがたいようだ。米国や日本でライセンス版が出ていないことに加え、各
曲分売というマックス・エシック特有の販売形態も本作品の普及を阻んできた一因と考え
られる。エシックの近時の再版傾向からみて、本作品もいずれ合冊版が出ることとなろう
が、現段階で全曲を手元にそろえておかれれば、日々のレッスンから発表会、コンサート
まで多くの場面で使いやすさをすぐに実感いただけるものと思う。
第1曲 クリスマス(Noël)Modéré(中庸に)、4分の3拍子、ト長調。
第2曲 おごそかな歌(Air solennel)Lent(遅く)、4分の4拍子、ハ長調。
第3曲 夢(Rêverie)Modéré(中庸に)、4分の3拍子、イ短調。
第4曲 ゆりかごの歌(Air à bercer)Lent(遅く)、4分の4拍子、ト長調。
第5曲 コラール(Choral)Modéré(中庸に)、4分の4拍子、ハ長調。
第6曲 ワルツ(Valse)Modéré(中庸に)、4分の3拍子、イ短調。
第7曲 シャンソン(Chanson)Modéré(中庸に)、4分の4拍子、ハ長調。
第8曲 アリエッタ(Arietta)Modéré(中庸に)、4分の3拍子、イ短調。
第9曲 メヌエットのテンポで(Tempo di minuetto)アレグレット、4分の3拍子、ト長調。
第10曲 人々の歌(Air populaire)Lent(遅く)、4分の4拍子、ハ長調。
第11曲 ささやかな物語(Petit conte)Modéré(中庸に)、4分の3拍子、ホ短調。
第12曲 終曲(Final)Décidé(きっぱりと)、4分の4拍子、ハ長調。