1950年7月、サン=ジャン=ダンジェリにて作曲。白鍵のみで書かれたソナチネ。見開き2ページの小曲。ミゴは臨時記号を一箇所も使わない白鍵の曲を好んで書いた。本作以外にも、あえて白鍵用とは言及せず、ソナタや組曲にオール白鍵の楽章を組み込んでいる例があり、中には稀代の難曲もある。したがって本作の技術上の平易さは、あくまでも簡素な書法に由来する。白鍵の曲だから平易なのではない。
ごく短い3楽章よりなる。
第1楽章「前奏曲」(Prélude)はつらつと明瞭に(Allègre et clair)4分の4拍子。
第2楽章「子守歌」(Berceuse)ゆっくりと穏やかに(Andante, modéré)4分の3拍子。
第3楽章「フーガ」(Fugue)きっぱりと(Décidé)4分の4拍子。
二声の単音のからみあいだけの薄いテクスチャーが一貫する。音数自体は少ないが、学習者はある程度、多声音楽に慣れてから(バッハの二声インベンション程度)取り組むほうがよい。「子供たちと音楽家のために」とあるから、学習者だけが対象ではない。清澄、穏健な曲想は他に類例がなく、演奏家にとっても魅力的なレパートリーとなろう。
Jean Pourtal de Ladevèze(詩人)への献呈。ミゴはプールタル・ド・ラドヴェーズの詩に基づく歌曲、合唱曲を書くなど交流があった。ミゴは詩作にも秀で、1951年に上梓した詩集もプールタル・ド・ラドヴェーズに献呈している。