ミゴの既出版作品中、唯一のワンハンドのピアノ曲(このほかにもワンハンドの未刊作品がある)。1941年3月から4月にかけレ・ピヴォチエール(ロワール地方フォンデット)にて作曲。
第二次世界大戦中、ミゴは同所にとどまり、ポワチエ音楽院での教職と並行して精力的な創作を続けた。1939年のピアノ曲《アンヌ・マリーの書》と同じく、本作もマルセル・ピノ
ー(Marcelle Pineau)に献呈された。併せて、ミゴの慣例で、ピノーとは別に各曲一名ずつ、個別の献呈先も設定している。タイトルに「組曲の形式による」とある通り、バロック期の組曲を念頭に、右手一本で独自の高度な多声音楽を構築する。叙事的で起伏のある語り口の第1曲(Allant et décidé 4/4 Nicole de Romeuf のために)。複数の旋律が錯綜する第2曲(Andante et chantant 6/8 France Chiron のために)。第3曲(Allègre et légèrement 3/4 Yvette Barot のために)はメヌエット風。第4曲(Lentement, avec émotion 4/4 Marie-Thérèse Lacôte のために)はしめやかな弦楽合奏を思わせる厳粛さ。終曲と題された第5曲(Final - Décidé et rythmé 2/4 [ou 1/2] Suzanne Parnaudeau のために)は躍動感にあふれ、技巧的に展開する。全体に難度は高い。要所要所に作曲者自身による運指の表示があるのは大きな助けとなろう。ワンハンドピアノ曲の本格的なレパートリーとして注目に値する。